■目次
ギター自作その3「フレット溝切り・ナット切り出し・指板接着など」
ギター自作その5「ヘッドネック・ブリッジテールピース・ナット溝切りなど」
ギター自作その8「ピックガードやノブの製作・キャビティの座繰り」
ギター自作その9「仮組み・ボディ塗装」 ←今ここ
さてこれから仮組みです。後で不具合が見つかると悲劇ですので、やはり仮組みをして確かめておかないと不安ですからね。
ブリッジをグランド(GND)に落とすための配線を穴に通し、ブッシュを差し込みます。
ピックアップを搭載したピックガードを取り付けました。
コントロールサーキットも配線完了。
木で手作りしたノブやキャップも付けました。
これにて仮組みが完了です。生音で弾いて確かめ、アンプに繋いで確かめます。全く問題無くエレキギターでした。感動的ですね。このまま無塗装のままでも良いなあなんて思ったりもしますが、楽器の安定のためにも最低限の保護塗装は施さねばなりません。
フレットとナット以外のパーツをすべて外しました。ブリッジやテールピースのブッシュは面倒くさいので差し込んだままです(後で少し後悔する事になります)。
仮組み状態で弾きこんでわかったのですが、自分の体に当たる部分が気になるのでコンターを設けることにしました。ボディー部分で肘が当たる表面と裏側の肋骨があたる部分を削った処理の事を「コンター加工」と言います。こちらは肘が当たる部分のコンター加工。
こちらは肋骨が当たる部分のコンター加工。毎度大活躍のノコヤスリでガリガリと削り、仕上げに目の細かいヤスリで表面を整えました。
次に塗装に向けてギター全体をサンドペーパーでサンディングします。最初に60番~80番くらいの粗さで角を取り、120番、180番、240番と番手を上げて磨きました。すっかり綺麗になり全体がとても滑らかです。これ以上ツルツルにしても塗装の喰いつきが悪くなるだけですので350番で終了。ネックのシェイプも最終調整してあります。
たわしや綺麗な布で拭いて削り粉を丁寧に落とします。
指板を完全に覆うようにマスキングテープを貼りました。指板は無塗装ですからね。
マイクスタンド2本と、ピックアップワインダー製作時に余ったアルミパイプを利用してギターを吊るします。アルミパイプがたわんで非常に不安ですがそのまま進みます。
いよいよ塗装に入ります。今回はオイルフィニッシュ塗装を目指して進めていましたが、やはりWATCOのオイルフィニッシュ塗料でも最も濃い色はエボニー色どまり。ボディ材の切れ端で試し塗りをしてみても薄い茶色になるばかりでした。
もっともっと濃くて黒い塗装を求めていたので、WATCOオイル塗料に墨を混ぜてみることを思いつきました。ただオイルに水は混ぜられないため墨汁は使えないので、硯(すずり)と墨を買ってWATCIOオイルで墨をする事にしました。しかしオイルでは全く墨がすれず、塗料に黒い色が付く事はありませんでした。
化学的な塗料が不得意なこともあり、更にはここまで木を駆使したパーツなども自作していることで自分の中の怪しげなオーガニック意識(?)も高まってしまったので、何か天然系の塗料は無いものかと探しているうちに、以下の素材を中心に塗装する事に決めました。
■渋墨(しぶすみ)
柿渋をベースに松煙・清酒を混ぜた真っ黒い塗料。松煙(しょうえん)とは樹脂含有量の多い松の根元を不完全燃焼させてつくった煤(すす)を用いた炭素黒色顔料で、和墨の原料としても知られています。渋墨は日本古来より使われてきた防虫防腐効果をもった純和風塗料で、黒塀などでよく見られます。「渋墨」で画像検索すればわかりやすいです。大量に入ってAmazonで2380円でした。
■べんがら(弁柄・紅殻)
酸化鉄を主成分とした赤褐色の顔料で、無毒で人体にも安全なため用途は多く、縄文時代や弥生時代の土器にも使用が確認されています。べんがらの語源は、インドのベンガル地方に天然酸化鉄が多く産出し、これが日本に流入して来たところから俗にベンガラニッチと呼ばれ、略してべんがらとなった説が有力だそうな。こちらも画像検索するとわかりやすいです。有り余るほど入ってAmazonで980円でした。
■柿渋(かきしぶ)
柿の液汁を発酵させた液体。乾燥させると硬く頑丈になり防水機能も有するようになるため古来より番傘やうちわなどに塗られたり、ミイラや漁業網に塗られたりしていたそうです。塗装直後は、薄い茶色ですが、時間が経つにつれ、深みと光沢のある褐色へと変化していくのが特徴です。多くの人が悪臭と感じる独特の臭い(銀杏系)がありますが、乾燥が進めば1週間ほどで消えていきます。最近は、においの少ない柿渋塗料も販売されています。たっぷり入ってAmazonで1090円でした。
左から渋墨、べんがら、柿渋になります。刷毛(ハケ)は水性用の物をいくつか用意しました。
渋墨にべんがらを溶いたものを塗っていきます。べんがらの赤味は非常に強力で、コップ1杯ほどの真っ黒な渋墨に小さじ半分くらいのべんがらを入れただけで茶褐色になります。
塗って1、2分で布で拭きます。そうする事によって余分な塗料が取れ、ムラも無くなります。このような用途で使う使い捨ての布をウェスと言いますが、不要なTシャツなどなんでも結構です。塗料のふき取り具合がわかるように白がお勧めですね。ただ、塗装時には大量に必要になるので買ってしまった方が経済的です。1kgでも400円程度と安いので買ってしまいましょう。
全体を塗ることが出来ました。光沢が出てくるのは後の柿渋工程や蜜蝋ワックス工程ですが、この時点でもだいぶ良い雰囲気です。あっという間に乾きますが念のため24時間置くことにします。木に水をこぼしたものが乾くくらいのスピードで乾きます。さすが水性。
今度はべんがらを含まない真っ黒な渋墨を塗りました。塗装はどんなときも基本的には木目にの方向に沿って塗ります。
裏側の全体を塗ります。こちらも数分置いたらウェスで優しくふき取ってムラを取り裏返し。拭き過ぎるとすぐに下地の褐色が出てくるのでムラを取るだけのつもりで拭き取ります。
表面も同じく塗ります。キャビティ内は導電塗料を塗るので無塗装です。
ウェスで拭いた感じがこちら。
20分くらいでこんなに乾きます。
茶褐色1回、真っ黒渋墨3回塗りでこんな感じです。各塗装の間は24時間あけています。回を追うごとに、ウェスでの拭き取りは軽めにしてあります。
バックはこんな感じです。色合いを見てみると、1番最初に塗った茶褐色が功を奏している気がしますね。
ネックの質感も良い感じです。
ヘッドも問題無し。ロッド溝の事を何も考えていませんでしたが、とりあえず細い筆で塗っておきました。
江戸の町の屋外の黒塀などに使われてきた渋墨ですが、一応は水性塗料の一種ですので柿渋でコーティングします。刷毛で満遍なく塗った後、こちらも数分後にウェスで余分な柿渋をふき取り、ムラをなくします。
裏返してボディバックも塗ります。
柿渋は3日間隔くらいで3回塗りしました。柿渋は日を追うごとに色が渋く濃くなり、太陽に当てるとさらに発色が良くなりますが、どちらにせよ黒ですのでそこは気にしません。色味を見ながらでないならば1日間隔でも平気そうです。
マイクスタンドとアルミパイプで不安定に吊るしていたので1度落下してしまい、塗装ごと木が欠けてしまいました。渋墨と柿渋を再塗装して補修です。
柿渋を3回塗り終えて乾燥させたところでギターの塗装は完了。柿渋を塗る前は、触ると少し煤(すす)が手についていましたが、柿渋を塗った後はほとんどつかなくなりました。ブリッジとテールピースのブッシュを挿しっぱなしで塗装したので、その周囲が塗り切れていませんでした。しかし気付かずそのまま進めてしまいました。
次はピックガードの塗装です。
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