ギター自作その11「蜜蝋ワックス塗布・組込み・完成まとめ」

■目次

ギター自作その1「計画・準備・材料調達」

ギター自作その2「ボディ切り出し・トラスロッド仕込みなど」

ギター自作その3「フレット溝切り・ナット切り出し・指板接着など」

ギター自作その4「指板整形・フレット打ち込みなど」

ギター自作その5「ヘッドネック・ブリッジテールピース・ナット溝切りなど」

ギター自作その6「ピックアップの自作」

ギター自作その7「フィルムコンデンサの自作」

ギター自作その8「ピックガードやノブの製作・キャビティの座繰り」

ギター自作その9「仮組み・ボディ塗装」

ギター自作その10「ピックガード塗装・シールディング」

ギター自作その11「蜜蝋ワックス塗布・組込み・完成まとめ」  ←今ここ

ギター自作その12「完成写真」


 

全ての塗装が終わったので、指板を覆っていたマスキングテープを剥がします。

 

 

まずは指板のクリーニング&艶出しにローズマリーハーブ漬けの椿油で指板を拭きます。この椿油は石鹸作りの際に使っている物ですが、椿油ですのでもちろん木部の艶出しに使えます。ギター界で定番のレモンオイルなどは、石油由来の正体不明なオイルですのであまり好きではありません。

 

指板にたっぷり塗って、数分後にウェスで綺麗に拭き取ります。指板整形時の削り粉などが取れて白いウェスが真茶色になります。拭いたあと1時間くらい乾燥させ、また椿油を塗って拭きます。3回繰り返したのでとても綺麗に黒光りするようになりました。

 

 

続いて自作の蜜蝋ワックスでギター全体の艶出しと保護を行います。ニホンミツバチの蜜蝋(天然の蝋)と荏油(えあぶら)を混ぜたシンプルなワックスを、ピックガードに薄く薄く指で塗っていきます。塗り終わったら数分置いて、浸透しきれなかったワックスをウェスで拭き取ります。ピックガードの裏側も同じように塗ります。塗った後は24時間乾燥させ、もう1度同じようにワックスを塗り、さらに24時間置いて出来上がり。合計2回塗りですね。

 

 

ボディにも同じやり方で塗ります。

 

 

ウェスで綺麗に拭きとります。

 

 

先ほど椿油でクリーニングした指板にも蜜蝋ワックスを塗ります。こちらも塗った後はウェスで拭き取ります。こうして全ての木部に蜜蝋ワックスを2回塗りしました(各乾燥24時間)。光沢が美しく、触ってもべたつかずにすべすべです。

 

 

さてここで問題が発生しました。前項目でキャビティ内に塗った導電塗料ですが、テスターでどこを計測しても若干の抵抗値が現れ、導通していない事がわかりました。これではシールド効果がありません。塗料はしっかり攪拌してから塗りましたし、丁寧に2度塗りもしています。数年前に購入したものなので変質してダメになってしまったのか、不良品だったのか、そもそもそういう商品だったのか。今まできちんと導通チェックをしたことが無かったので何とも言えません。

 

導通していない事は事実ですので、せっかく塗りましたが別の方法でシールディングする事にしました。まず用意したのは100円ショップで購入したアルミテープ。

 

 

こちらは粘着部分が導通しないので重ね貼りしてもアルミ箔同士が導通しないのですが、手持ちの銅箔シールを貼ると導通しました。よって全ての境界に銅箔を貼ります。

 

 

これで安心と思ったのですが、先ほどの銅箔が導通していたのは何かの偶然で、結局導通していない事が判明。ハンダ付けでもできれば複数の金属テープを貼り合わせてシールディングできるのに、残念ながらアルミにはハンダが乗らないのです。

 

ならばハンダが付く銅のテープでシールディングすればいい、ということに気付きまして、手持ちの幅広な銅箔テープを使ってみました。

 

 

銅箔が重なる部分はハンダ付けすればバッチリ導通しました。

 

 

コントロールキャビティの蓋も同じく銅箔テープでシールディング。

 

 

ギターのキャビティ内もせっせとシールディングしました。銅箔テープは薄い金属ですので、まるで刃物のように指先を切り裂きます。シールディングが終わるころには指先がズタボロになっていました。

 

 

ジャック穴の内部にも貼りました。薄くても金属ですので貼るのがとても難しかったです。

 

 

シールディング加工完了後、あらゆる箇所の導通チェックを行いました。どこも孤立せずに導通しています。

 

 

そういえば手作り木製ノブに目盛りが付いていなかったので付けることにしました。市販のノブを参考にエンピツで目盛りを刻みます。ステージでは目盛りなど不要ですが、レコーディング時にセッティングを記憶しておくために目盛りと数字はあった方が便利ですからね。

 

 

鉛筆の印に合わせてマイナスドライバーで目盛りを刻んでいきます。

 

 

次に数字を刻んでいきます。ドライバーで刻むのでデジタル時計のような7セグメント文字です。ただ、全部終わって気が付いたのですが、文字を逆に刻んでいました。0の時にボリューム最大、10の時に無音になるという信じられないミス。もうどうにもなりません。作り直すのもごめんです。ギター製作には無限のトラブルが付きまとうのですね。

 

 

スタッドにブリッジを固定できるようにイモネジを取り付けます。同様の市販品が結構な値段で販売されていますが、そのような加工は自分でも簡単にできます。ブリッジがガッチリ固定されるので弦振動伝達的にも多少は有利ですし、1度決めた弦高が容易にズレてしまうことを防ぎますし、弦交換時にブリッジが外れてしまうこともありません。

 

イモネジを取り付ける部分にセンターポンチでくぼみをつけます。

 

 

イモネジ用の下穴を開けます。今回は直径2.5,mm穴です。

 

 

イモネジ用のネジ溝を切ります。このような作業をタップ切りといいます。3mm用のタップドリルを使います。

 

 

ゆっくり丁寧に、コルクにコルク抜きを差し込んでいくように回しながら差し込んでいきます。

 

 

貫通したら逆に回して抜いてタップ切り完了です。

 

 

3mmのイモネジを用意します。イモネジの長さはブリッジに合わせて選びましょう。

 

 

イモネジを挿入します。

 

 

細い六角レンチでスタッドに固定できます。

 

 

最後のワックス塗布から24時間経過し、シールディングも施したボディとピックガードがこちら。組込みを開始します。

 

 

 

GOTOH社のマグナムロックトラッドというロック式ペグ搭載しました。ギア比1:21のものにしてありますので(普通は1:15や1:18等)、たくさん巻いてもなかなか弦が巻けません。つまり非常に細かいチューニングが可能となっております。

 

実は取り付けの際にキツく締めすぎて、ナットが捻じ切れるという事故が発生しました。写真で言うと1弦と5弦のペグです。今製作で何度目の絶望でしょう。販売店に連絡しようと思ったのですが、特注ペグをバラ売りしてくれるとは思えません。そこでGOTOH社に直接電話して相談すると、なんと無償で修理交換してくれるということになりました。こんな慈悲深い対応がありましょうか。数日で新しい1、5弦ペグが送られてきました。言ってみるものです。もうペグは一生GOTOH製しか使いません。

 

 

ブリッジとテールピースも取り付けました。

 

 

ピックガードにピックアップを取り付けようと思ったのですが、塗装で木が膨張したのか、穴にビスが入りません。ドリルで穴を再拡張します。

 

 

ピックガードにピックアップを取り付けました。

 

 

この時点で音叉を使用してアンプから音を出してチェックします。挫折を繰り返したピックアップに関しては神経質になっています。

 

 

ピックガードをボディに取り付けようとねじ止めしている最中に、パキっという音とともにヒビが入りました。ペグ同様に、力加減は慎重にしなければいけませんね。

 

 

ピックガードの取り付けが終わりました。ネジが多くて大変です。

 

 

コントロールキャビティの蓋にスイッチと可変抵抗器、そしてそれぞれのキャップとノブを取り付けます。

 

 

両者の配線も済ませておきます。

 

 

キャビティのシールディング加工は、グランド(GND)と導通させないと何の意味もありません。銅箔を貼った内壁にアースラグをネジ止めします。

 

 

コントロールキャビティ内の配線も行いました。

 

 

蓋を閉めてネジ止めします。

 

 

ジャックも配線します。

 

 

ジャックプレートの取り付けも完了。

 

 

組込みが終了しました。

 

 

最後に愛用のストラップピンを取り付けます。いつものDimazio社のCliplockです

 

 

初めての自作ギター「グングニル」の完成です。

 

 

まったくの独学でスタートしたエレキギターの自作ですが、どうにか終了しました。新年会でギター自作の話で盛り上がってから約1カ月半。いつから製作がスタートしたのか記憶にありませんが、1日のうちの少しの時間を使って作業を進め、作業できない日も多かったので、実働で言えば大体1カ月くらいで完成したようなイメージです。

 

出来る限り手持ちの素材や手持ちの工具で作ることをモットーに進めていましたが、結果的に色々なコストがかかりました。ご自身でも作ってみようと思って下さった方のために今製作のコスト感をまとめておきます。例えばブリッジなどは手持ちの物を流用しているので表に記載されてはいませんのでご注意ください。

 

材料
 分類  詳細 購入店 金額
 ボディ材  マホガニー(正体はくるみ)170.5×31~40×5  ヤフオク  18000円
 指板材  エボニー材 Aランク70cm BASS用  aimoku  1944円
 ペグ  GOTOH  SGL510Z MG-T-A07-L6-C (S×3 L×2 XL×1)  ファクトリズム  14823円
 フレット  Jescar 57110-S ステンレスジャンボフレット  ヤフオク  5000円
 ピックガード材  メイプル材 400×250  大和マーク  2756円
 P.U材料  ピックアップボビン用インドローズウッド材  aimoku  648円
 ナット材  ナット用SUS304ステンレスフラットバー  モノタロウ  679円
 ロッド  2wayトラスロッドβチタン  タツタ  4800円
 ビス類  丸皿タッピンねじ 3×15 34個  モノタロウ  323円
 P.U材料 フェライト丸磁石×36個  二六製作所 1368円
 P.U材料 0.05mmポリウレタンエナメルワイヤー オヤイデ電気 5065円
 P.U材料 ポッティング用パラフィンワックス  キナリ 767円
 部品 ポインティングワッシャー  千石電商 31円
 部品 エンブレムプレート  オフィスたなか 3500円
 合計     59704円
工具類
 工具  Fクランプ×8  ダイソー  1728円
   あて木用端材詰め放題  勝又木材  1000円
   作業台・ワークメイト WM225  タツマックスメガ  5760円
   EARTH MAN 電動トリマ TR-100  コンプリート  5639円
   EARTH MAN卓上糸鋸盤SS-110  ヤフオク  4300円
   600mmストレートエッジ  ストレート  3100円
   糸鋸用替え刃細目・極細目各5本  オリーブガーデン  2568円
   大日商 ガイドべアリング付ストレートビット 6×10L25  クイックストア  2979円
   大日商超硬ストレートビット6mm  モノタロウ  1369円
   ナット溝用3mmビット RELIEF  モノタロウ  604円
   MAKITAジグソー M421  クロガネヤ  9236円
   ジグソー替え刃木工円切り用   クロガネヤ  257円
   ジグソー替え刃硬木アルミ用    299円
   サンディングブロック 305R  ワイズスタジオ  2160円
   HOSCOフレットソーTL-H-FSW050  クロサワ  3024円
   HOSCOスクレイパー2種セット TL-SCR-2  クロサワ  1269円
   HOSCOフレットクラウンヤスリ TL-FF3  クロサワ  2911円
   HOSCOテープヤスリ KCR320  クロサワ  594円
   HOSCOナット取付溝ヤスリ3mm TL-SF3  クロサワ  1131円
   HOSCOナット溝切りヤスリ TL-NF3E

クイックストア

 7341円
   喰い切り  東急ハンズ  1490円
   スクレイパー  Amazon  334
   紙ヤスリ類  Amazon  2088円
   曲尺  Amazon  269円
   ブッシュ用11mmドリルビット  モノタロウ  1579円
  ジャック穴用25mmフォスナービット  モノタロウ  1462円
   接着剤用スポイト×2  モノタロウ 147円
  ブリッジアース用15mmロングドリル刃Φ3mm  モノタロウ  902円
   超高粘度ゼリー状瞬間接着剤  モノタロウ 649円
   木工用瞬間接着剤  モノタロウ  539円
 合計     66728円
塗装関係 
 塗料  渋墨1.8ℓ  Amazon  2380円
   べんがら  Amazon  980円
   柿渋500mℓ  Amazon  1090円
 道具  刷毛  東急ハンズ  370円
   筆類  ダイソー  108円
 合計      4928円
ピックアップワインダー   
 回路  DCモーター速度可変キット  秋月電子  500円
 モーター  DCモーターRE-280RA  秋月電子  130円
 素材  ステンレスシャフト(2mm)  千石電商  270円
   輪ゴムプラプーリー(2mm)×2  千石電商  970円
   アルミパイプ  東急ハンズ  133円
   金具類  東急ハンズ  166円
 合計      2169円
その他
 加工  プレーナーによる40mm削り  勝又木材  5500円
 印刷  A0サイズ図面印刷2枚  プリントポスト  540円
 材料  テンプレート用MDF材  クロガネヤ  448円
 雑費  各種送料合計    14606円
   各種代引手数料合計    1332円
 合計      22426円
総合計
       155955円

 

合計で15万円以上。できる限り手持ちの材料で挑みましたし、どうしても必要な工具以外はなるべく購入せずに頑張りましたが、結果的に結構なコストがかかっています。通販に頼る部分も多かったので、送料の合計も安くはないものになっていますね。しかし材料以外は今後も使っていけるわけで、それを考慮すると安いのか。消耗品である塗料も全部半分以上残っていますしね。しかし最初からある程度の工具類は所有していたので、何も持っていない人が挑むともっと高額になる恐れもあります。ということは、世間でのギターのオーダーメイド料金ってそこまで高くないのかも知れませんね。

 

完成した「グングニル」の各種写真は次項目でどうぞ。

 

←前へ 次へ→


■目次

ギター自作その1「計画・準備・材料調達」

ギター自作その2「ボディ切り出し・トラスロッド仕込みなど」

ギター自作その3「フレット溝切り・ナット切り出し・指板接着など」

ギター自作その4「指板整形・フレット打ち込みなど」

ギター自作その5「ヘッドネック・ブリッジテールピース・ナット溝切りなど」

ギター自作その6「ピックアップの自作」

ギター自作その7「フィルムコンデンサの自作」

ギター自作その8「ピックガードやノブの製作・キャビティの座繰り」

ギター自作その9「仮組み・ボディ塗装」

ギター自作その10「ピックガード塗装・シールディング」

ギター自作その11「蜜蝋ワックス塗布・組込み・完成まとめ」  ←今ここ

ギター自作その12「完成写真」