ギター自作その3「フレット溝切り・ナット切り出し・指板接着など」

■目次

ギター自作その1「計画・準備・材料調達」

ギター自作その2「ボディ切り出し・トラスロッド仕込みなど」

ギター自作その3「フレット溝切り・ナット切り出し・指板接着など」  ←今ここ

ギター自作その4「指板整形・フレット打ち込みなど」

ギター自作その5「ヘッドネック・ブリッジテールピース・ナット溝切りなど」

ギター自作その6「ピックアップの自作」

ギター自作その7「フィルムコンデンサの自作」

ギター自作その8「ピックガードやノブの製作・キャビティの座繰り」

ギター自作その9「仮組み・ボディ塗装」

ギター自作その10「ピックガード塗装・シールディング」

ギター自作その11「蜜蝋ワックス塗布・組込み・完成まとめ」

ギター自作その12「完成写真」


 

指板の加工に入ります。ギター木材販売で有名なaimokuで購入したAランクのベース指板用エボニー材。サイト掲載のものでは最低ランクですので色も黒ではなく茶色で、値段は税抜1800円とリーズナブルになっています。こいち氏のお話通りここの材のカットは垂直でもなく並行でもなく、ましてや直線でもないのでテーブルソーなどを持ってい無い身としては非常に困ります。

 

なんとなく中心に基準となる中心線を引きます。白い色鉛筆は他の色に比べて取り扱いが少なく、わざわざ東急ハンズで購入いたしました。

 

 

なぜベース用の指板材を購入したかと言いますと、余った部分でテールピースを製作するためです。まずは余分な部分をカットします。ナットの先にどの程度指板を残すか特に決めていなかったので、おおまかに7mm程確保して採寸し、切断箇所に線を引きます。頑張ってできる限り垂直の線を目指します。

 

 

まな板風の端材とL字の金具を使ってソーガイドを作ります。ノコギリを真っすぐ引くための補助具ですね。

 

 

垂直や直線に出来る限り気を付けて取付完了。ちなみに海外で有名なギター製作用工具メーカー「StewMac」にはもっと便利なソーガイドがあったりします。

 

 

このように使用します。フレットソー(フレット用ノコギリ)はHOSCOの0.5mmタイプ。自分の使用したいフレットのサイズに合わせて選びました。

 

 

どうにか初手の溝を付けることに成功しました。しかしエボニー材の硬いこと硬いこと。刃が滑って苦労しました。カッターなどで溝を切るべきだと気づくのは後のお話。

 

 

無事に切り終えてギター指板のサイズになりました。

 

 

ノコギリやヤスリがけをした際の粉はこうして採取しておくと、接着剤などに混ぜて後々の補修や修正の際に活躍するそうです。使うかわかりませんが先人らが皆そうしているので一応採取しました。

 

 

指板にフレットやナット用の溝を切る前に、ナットを削り出します。普段はニッケルシルバー(通常のフレットの材質)やブラス製ナットを使っていますが、どうしても数年で擦り減ってしまうのでステンレスで作ることにしました。私が所有するギターは全てステンレス製フレットなのですが、何年弾きまくっても1度も交換したことが無いほど減りません。知人のギター職人曰く、ステンレスはイヤだそうです。何しろ硬くて加工が大変だそうな。

 

ちょうど良い寸法のステンレスの平材は少ないのですが、モノタロウで700円くらいのSUS304(ステンレス鋼材)を見つけることができました。厚さ3mmの板です。

 

万力やクランプを組み合わせてガッチリ固定し、鉄管・一般金属用のノコギリ「ハイスパイマン」で切ります。ものすごく硬いのでどんなに頑張っても少しずつしか切れません。きっちり土台に固定して全身の力で切らないとまず1mmも切れません。

 

 

1時間ほどかけて切り出せました。横幅8mmくらいでしょうか。

 

 

目標のネック幅を目指してさらに切ります。

 

 

その後金属用ヤスリで整えます。この際も万力などに固定して力を入れないととても削れません。幅43.5mm、高さ6.4mm、厚さ3mmのステンレスナット材が用意できました。正直、ステンレス加工は2度とやりたくないと思いました。

 

 

次はいよいよフレットの溝切りです。レコーディングが多いためピッチの精度は非常に気になりますので、溝切りは最も緊張する工程の1つです。フレット位置の計算はDGB studio様の自動計算を利用させて頂いています。自分で地道に平均率を計算しても良いのですが、それは手間がかかり過ぎますからね。多くのギター製作者らがこのプログラムのお世話になっています。

 

その計算通りに描いた図面を実寸で出力して指板に貼ります。図面中心線と指板の中心線をしっかり神経質に合わせます。

 

 

慎重にカッターでフレット溝の位置を切っていきます。線を引く代わりですね。白鉛筆で線を引いても良いのですが、鉛筆の線の太さ自体が0.5mmありますから、0.01mm精度を理想とするフレット位置には向きません。

 

 

全てのフレットの最初の溝を切りました。この時点でも一応電子ノギスでフレット間隔を計測してみます。概ね問題無さそう。

 

 

それでは意を決してフレットソーで切っていきましょう。

 

 

木が硬くてどうしてもフレットソーが安定しません。一番右の22フレットが若干斜めになっています。こんな場所たまにしか弾かないとはいえ、やってしまいました。

 

 

調べてみると、最初に切ったカッター溝を徐々に広げていくべきのようです。前述の海外ブランドソーガイドを個人輸入すればもっと簡単なのでしょうけれど。Pカッターで線を広げると良いそうです。線がブレないように定規を当てて、結構強い力で何度かガリガリ削ります。

 

 

確かに、随分ノコギリを当てやすくなりましたが、Pカッターだけではまだ溝が細いようです。結局さらに定規を当ててノコギリの刃の端っこで溝を広げてから切ると安定しました。後で指板面にR(カーブ)を付けるために深さ4mmくらいを理想として全フレット溝を切りました。2時間ほどかかった気がします。

 

 

次にナット用の3mmの溝を掘ります。手持ちのヤスリで頑張ってみましたが、きっかり3mm幅のものは持っていなかったので上手く行きませんでした。

 

 

HOSCOのアコギサドルスロット用ヤスリが丁度3mm幅だったのでそれ購入して使います。一般工具でも探したのですがほとんど4mm幅のヤスリばかりで、3mmの品は見つかりませんでした。

 

 

本当は3mm幅のストレートビットを用意してトリマーで一瞬で溝を切ればよかったのかも知れませんが、精度を気にしたいのでヤスリで少しずつ掘り進めることを選びました。しかしこのヤスリの目が細かいのと、エボニーが硬いのとで、溝堀りにかなりの時間と体力を消費しました。やはりトリマーにしておけばよかったのかも知れません。ちなみに後で気づいたのですが、3mm厚で購入したナット材の実寸が2.8mmほどでした。3mmのナット溝に対して少し緩い感じですので、隙間埋めに前述のエボニー粉末が役に立ちそうです。そんなわけでナット溝掘り終了。溝の深さは大体2.8mmくらいです。

 

 

指板の中心線とネックの中心線を慎重に合わせてクランプで固定します。あらかじめネックに印をつけたナット位置やフレット位置とも当然合わせておきます。指板の幅はまだ全く切っていないので、ネック幅から大きくはみ出しています。

 

 

1フレットと最終22フレットの溝に太さ0.9mmの細い釘(こびょう)を打ち込みます。こうすることで指板とネックがズレてしまうことを防ぎます。釘穴はフレットに隠れてしまうので気にすることはありません。

 

 

細い釘ですので、力をこめれば指板を剥がすことができます。もう1度釘を穴に差し込めば元の位置に指板を戻すことができるという仕組みです。

 

 

ネックの接着面を240番のヤスリでサンディングして整えます。どのような目の粗さでサンディングすれば良いのかわからなかったので、なんとなく240番を選択しました。

 

 

指板裏の接着面も240番でサンディングします。ネック接着面はプレーナーで削ったまま、指板接着面は購入した時のままですので、きちんと平面になっているのかわかりません。綺麗にくっつきますように。

 

 

木工用ボンドでは金属はくっつきませんので、トラスロッドの端に高粘度ゼリー状のアロンアルファを垂らします。ロッドにはきちんと動いて貰わないといけませんので、接着固定するのは両端だけです。

 

 

トラスロッドを溝に収納したら、木工ボンドが付着しないようにテープでマスキングして超定番タイトボンドを指で塗っていきます。

 

 

テープを剥がすとロッド周辺にボンドが無いのがわかります。指板をきつく押し付けることでボンドが広がりますのでこれくらいで良いようです。

 

 

指板を再度ネックに貼り付けます。先ほどの位置合わせ用の釘が役に立ちます。しっかり位置を合わせたら、あて木などを組み合わせて9個のクランプで思いっきり圧着します。渾身の力でクランプを閉めましたが、これくらいで良いはず(予想)。全てのふちからタイトボンドがはみ出してくるくらい万遍無い圧力で力をかけたいですね。

 

 

タイトボンドの完全硬化時間は24時間だそうですので、念のため48時間ほど置いておくことにしましょう。

 

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