ライブステージでHX stompを使用するようになり、アンプヘッドのセッティングや運搬等の悩みから解放されて久しいですが、やはり現場への荷物は極力減らしたいと思うのがプロの本音。
上の写真のように、パワーアンプとしてOranegのPedal Baby 100を使用し、それ以外に2Uのラックに、PAやマニピュレーターからの回線をまとめるミキサーと、そのミキサーから送られた内容を耳に送るイヤモニシステムを入れて現場に出ておりました。本当はもっと減らしたい。
そんな中、ステージ仕事の機材仕込みをしていたある日、ふと気が付いてしまったのです。現在使っているパワーアンプをハーフラックサイズに小さくし、更に時々見かけるハーフラックサイズのミキサーと組み合わせれば、現在1Uのミキサーが収納されているスペースに収まるのではないか。そうすれば現場入りの荷物(パワーアンプ)がまた1つ減らせるのではないか、と。
しかしOrangeのPedal Babyの中身を見てみたところ、電源トランスの厚みがどうしても1Uに収まりません。代替できそうな薄型のトロイダルトランスを探してみたのですが、希望の電流量と電圧を兼ね備えた1Uに入るものは見つかりませんでした。
過去にいくつかのパワーアンプを使ってみた経験則から、自分の中で「パワーアンプなんてどれも一緒」という結論を出していたので、現在のPedalBabyに無理にこだわることはありません。早速小型の大出力パワーアンプを探してみることにしました。
そこで見つけたのがSeymour DuncanのPower Stage 170。どうやら代理店経由では日本発売されていない機種のようですが、ネットオークションにて格安で並行輸入品を入手しました。こいつをハーフラックサイズにノックダウン(分解して載せ替え)してみましょう。
170Wもの出力にもかかわらず、このコンパクトさ。3EQが搭載されていますが、パワーアンプでのEQをしない派なのでこの辺りは不要です。プリアンプ部分で作り上げた音をそのまま増幅してくれるだけで結構。念のため、2020年末のZeppYokohamaのステージ上でも試しに鳴らしてみましたが、音量も音質も全く問題ありませんでした。
背面のパネルも、電源ケーブル差し口、電源スイッチ、インプットとスピーカーアウトのみ。シンプルでいじりやすそうですね。
開けてみて一安心。1Uに入らないような厚いトランスは入っていませんでした。
中身をケースから出します。ケースはエフェクターを自作する知人へ提供。
ハーフラックサイズの筐体として使用するのは、ネットオークションで1000円で購入したVictorの謎の機器。TV系の何かでしょうか。
緑色の基板やトランスなど。これらは全て取り外して捨てます。
パワーアンプの必要回路を仮置きしてみます。問題なく収まりそうです。
つまみ類は4つありますが、マスターボリュームのみをフロントパネルに実装します。もともと付いていた可変抵抗器を取り外しました。残りの3EQはポジションをセンターにしたまま内部へ残します。
フロントパネル実装用に、新たな可変抵抗器を結線します。
マスターボリュームを新しいものに交換した時点で念のため動作確認を行います。何もチェックせずに進んで、取り返しのつかない段階でミスに気付くことを繰り返しきた経験がそうさせます。ちなみに普通の歪み系のエフェクターも立派なプリアンプです。エフェクターをパワーアンプに接続すれば、大きなアンプヘッド無しで問題なく演奏可能です。
無事に音が出たので、フロントパネルにマスキングテープを貼り、ツマミ類の穴を開けるための印をつけます。
入力ジャック、ボリューム、スイッチ、LED類用の穴を開けました。非常に硬いので一苦労です。
手持ち式の精密糸鋸を使い、バックパネルに電源インレット用の四角い穴を開けます。
ケースの底面にも基板取付ネジ用の穴などを開けていきます。
ドリル刃が折れてしまいました。硬い。
開けた穴にネジを入れ、基盤を取り付けます。基板裏面はハンダ面が剥き出しですので、ケースに触れないようにスペーサーで浮かせます。
廃熱用ファンのための穴も開けました。任意のサイズの大きな穴を開けるのは自在錐が便利ですが、材質が固かったので非常に時間がかかりました。
電源インレットを取り付けるネジ穴部分に、既に大きな穴が開いていたのでその辺にあった金具を使い固定しました。
廃熱ファンを取り付けるためのボルト用にナットを固定します。5分硬化のエポキシ接着剤が強固でおすすめです。
基板を行き来する配線を伸ばすためにフラットケーブルを購入してみましたが、コネクタの形状が合わず断念。
結果的に、全てのコネクタに導線をハンダ付けするというかなり面倒くさい配線となりました。
塗装前の仮組完了です。もちろんここで動作チェック。案の定最初は音が出ず、配線不良個所を特定してどうにか無事に音が出て完成。段階ごとのこまめな動作チェックは本当に大切ですね。
仮組を1度バラしまして塗装をしていきます。
まずはサンドペーパーで全体をサンディングします。
下地材としてメタルプライマーを塗布し、乾燥後キャンディカラーと黒で塗装しました。自宅に余っていた10年モノのスプレーです。装飾に、余っていたインレタを置いてみます。それっぽくなりますね。
インレタツールを使ってインレタを貼りました。
最後に上からクリアでコーティングして塗装終了です。塗料がタレてしまったり、割と粗めの塗装でしたが、どうせラックケースに収めてしまいますので気にしません。
再度中身を組み込みまして完成です。
フロントパネルの様子。なかなか良い感じです。
と、ここで外部電源を供給するための100VACアウトを増設することにしました。
電源入力の横につけます。
2極ですが電源出力可能です。これにより必要コンセントが1口になりました。
ネットオークションで購入した古いYAMAHAのミキサーと一緒に1Uラックスペースに搭載してみます。マウンタには丁度良いサイズのRoland製のものを購入しました。
Roland(BOSS)純正ハーフラック機材用に作られているので凹凸などが合いません。3mm厚のゴム板を切って高さを揃えます。
マウンタに穴を開けてネジ止めできるようにしました。
ミキサー側は穴の位置などが合わず、かなり強引な取り付けになっております。ですがガッチリと固定されています。
上手く収まりました。
空いた右上のスペースなどにケーブル類も全て収納され、非常にコンパクトになりました。コンセントを1つ挿せば、全ての機材の電源が入ります。
それではこいつを実践投入してみましょう。
ラックケースの蓋部分にはワイヤレスイヤモニシステムのレシーバーが固定できるようにスポンジを取り付けています。電源タップも蓋の中に収納できます。
電源タップケーブルのパールっぽい紫色がかなり嫌いなんですが、変えるのも面倒でずっと使っています。
ステージではこんな感じ。機材の物理的な小ささや、迫力ある音はもちろん大満足。実践の場での動作も安定していて良かったです。ただ、ラックケースをキャビの上に乗せるとどうしても頭でっかちに見えてバランスが悪いので、次からはキャビの横に置くことにしようと決意しました。