マイク界の超定番名器であるSHUREのSM57。それに内蔵されているトランスが音のレンジを狭めるとして、それの除去改造が有名です。海外では除去だけではなく交換用のトランスなども多く販売されています。
トランスをただ取ってしまうだけではインピーダンス的にも出力的にも、バランス転送にも難があるので、ファンタム電源(48V)で駆動するプリアンプを内蔵します。2010年頃に少し話題になったV.I.R57TLとほぼ同じです。
まず分解し、トランスの結線を外します。写真は私が赤く塗装しただけで、いたって普通のSM57です。
トランスはグルーで固められているので、鍋で煮てやわらかくなった所をすかざす取り出します。鍋に入れてお湯が沸騰したくらいでスポット抜けます。くれぐれもマイクユニット側をお湯に入れないように。やったことはありませんがドライヤーなどで温めても取れるそうですよ。
真ん中のナットにタマゴワッシャーを取り付けグランド端子を形成しておきます。
内蔵プリアンプ回路は完全ディスクリート、単純にしてクラスA原音増幅回路。バランス転送ですので、精神衛生上トランジスタの特性は0.5%以下の誤差で揃えます。もちろんコンデンサも抵抗も
トランジスタのhFE(増幅率)はYランクを選択。今回は173でマッチング。あんまり増幅しすぎてもしょうがないので。
回路図はこんな感じです。
費用としては、線材100円くらい、基板面積10円分くらい、トランジスタ2つで50円以内、抵抗5本で30円くらい、タンタルコンデンサ2つで60円、で合計250円。そんなに難しい改造でもないので、休み休みで2時間。随分お徳で実用的な改造です。
さて肝心の音の方はどうでしょうか。V.I.R57TLが発売された際のメーカーコメントは以下のような感じでした。
1、57特有の中域の張りが落ち着き、よりフラットなF特性となる
2、低域の量感アップ。たいへん伸びやかで豊かなローエンド
3、中高域の解像度が高くなる。
4、心地よい倍音成分が芯の通ったリッチな存在感を演出。
どうもよく聞くようなレビューですが、とにかく「良くなる」と言うことなんでしょう。実際に使ってみた結果は、すごくギラギラするようになった気がします。確かに低音域がしっかり迫力を維持して録れるような気がします。スタジオのエンジニア氏に音をチェックして頂きましたが、まずまずの結果。もう少しチリチリとした音域を押さえたいように思いましたが、これも充分即戦力です。ギター録りの際は複数本マイクを立てますが、その中に1本このマイクを必ず使っています。
2017年6/22追記
久しぶりに同改造を行いました。執筆時、基板裏の写真を載せていなかったので掲載しておきます。自分用の備忘録として。