ストラトキャスターを初入手&カスタム

 

大嫌いだったストラトを入手しました(結果的にストラトが好きになりました)。

 

ギターを初めて手にした時からGibson派で、その後は自分のオリジナルモデルしか手にしなくなるのですが、それらも全てセットネックでハムバッカーPUでGibsonタイプのブリッジを基本としていました。

 

Fenderの名器ストラトキャスターは、ネックがネジで止まっているだけですし、ブリッジは動いてしまうし、オクターブチューニングの精度も低いし、ノイズの多いシングルコイルだし、ボリュームノブに手が当たるし、なんでこんなに不完全で精度の低い楽器が人気なのだろうと不思議に思っていました。

 

しかし近年では楽器なんてなんでも良くなってしまいまして、現場での演奏性にこだわるくらいです。もはや見た目が気に入ったギターなら何でも良い、とさえ思っています。

 

2022年の秋にとあるアーティスト様のサポートツアーに参加する予定があり、その際に演奏すべき楽曲の音源を聴かせて頂きました。耳を凝らしてみれば、いかにもフェンダー系のシングルコイルのサウンドばかりではありませんか。これは流石にフェンダー系のシングルコイルの音が無いといけないな、と思いました。しかしリアにシングルコイルが乗ったギターを1本も持っていません。それならば、シングルコイルギターに挑戦して、最悪その慣れないサウンドに挫折して諦めたとしても、準備だけでもしてみた方が良いのではないか、と思ったわけです。

 

そこで、Fenderのストラトキャスターを買ってみる事にしました。単発ツアーの為だけなら知り合いに借りたりした方がコストパフォーマンスは良いのですが、たぶん周囲のギタリストたちが所有しているギターはどれも高そうですし、そんなギターは畏れ多くて借りられません。気兼ねなく使うには絶対買った方が良いでしょう。

 

ですが自分がストラトに慣れる事ができるかも分からない中で、良い値段のギターを買うのは気が進みません(僕はケチなのです)。というわけでイジくり倒しても良いくらいのリーズナブルなギターの入手を計画しました。

 

周囲のギター職人やギタリストに聞けば「フェンダーのジャパンだって十分良い音する」と口を揃えるものですから、ネット中古市場を中心に捜索しました。そこで出会ったのがこのギターです。ヘッドのブランドロゴも消えかけているし、ピックガードやピックアップはどこの物かもわからない交換品で、しかしバキバキに割れた塗装と、枯れた色合いのヘッド、赤くないサンバーストに鼈甲ピックガード、ローズウッドの指板に一目惚れました(メイプル指板は嫌いなので)。多分ジャガーやジャズマスにも近い雰囲気が好きなのかもしれません。完全に見た目だけで決めました。

 

 

Kシリアルのジャパン製品なので、恐らく1990年製。その頃はフジゲン製作のはずです。

 

 

ボディの塗装の割れ方がかなり特殊でした。診てくださったギター職人様曰く、水没系の割れ方だそうです。例えば火事の際の放水などでもこのような割れ方に至ることが多いとのこと。ますます面白い。

 

 

裏側の塗装も割れています。

 

 

初めてのストラト入門にピッタリの1本です。3万円ちょっとで入手することができました。これを自分好みに好きなようにカスタムしていきます。

 

まずはキャビティ部分にシールディング加工が施されていなかったので、導電塗料を塗布しました。フロントとリアのザグりがハムサイズになっていますが、どうやら様々なモデルに対応できるよう、Fender社ではよくあることだそうです。

 

 

これでシールディングが施され、外来ノイズを軽減するようになります。フロントPUキャビティ部分で塗料がはみ出ておりますが、ピックガードのアルミ箔との接点を増やすために故意にそうしております。

 

 

ヘッド上のストリングスガイドが錆びていたので交換しました。弦落ちや共振を抑えたり、現に程よいテンションをかけるための役割を持っています。

 

 

ペグはロック式以外認めませんので、GOTOH社製のクルーソンタイプマグナムロックに交換しました。写真下部のカーボン製スペーサーも購入したのですが、穴径に合わず使用しませんでした。

 

 

Fender刻印入りブリッジが搭載されていましたが、作りが軽そうなうえにサビついていたので現行のFenderブリッジに交換しました。

 

 

現行のトレモロブロックの方が肉厚で重量もあります。多少なりとも弦振動に好影響をもたらしてくれることでしょう。

 

 

現行品にもFender刻印入りのサドルが載っていましたが、GRAPHTECH社のPS-8000-00モデルに交換しました(写真左)。

 

 

古いストラトのネックは、一度ボディから外さないとトラスロッド調整ができません。これは非常に厄介で不便ですので、ESP林職人にお願いしてホイールナット取り付けと、そのためのザグりをお願いしました。

 

 

これにより、ネックだけではなくピックガードすら外すことなく、いつでもトラスロッドの調整ができるようになりました。

 

 

回路周りは全て交換しました。謎のピックアップが載っていたのですが、メギドファイアを製作するときに知人らに頂いたシングルコイルPUに交換。フロントにはDIMARZIO社のDP408 Virtual Vintage 54 Pro、センターには同じくDIMARZIO社のDP117 WHITE HS-3、リアにはSEYMOUR DUNCAN社のSSL-4 Quarter-Poundです。全て8年ほど前の貰い物です。使う日が来るとは思いませんでした。なんでも取っておくものですね。

 

 

国産の5WAYスイッチをMONTREUX製のものに変え、マスタートーン、マスターボリューム仕様にしました。ストラト特有のブリッジ付近のボリュームノブは、演奏しているときにかなりの頻度でぶつかってしまいますので、それを取り払ったというわけです。ストラトに慣れている人ってすごいですね。

 

可変抵抗器も国産の大きなものに交換し、コンデンサは60年代の真空管ラジオから外した松下電器製の0.05μFのものを付けてみました。線材はWestern Electric社製のヴィンテージ線です。このようにヴィンテージのパーツ類を使うと高級な音が出そうですが、そんなことはありません。ただの廃品利用です。

 

 

そして高校生の頃からお世話になっている松下工房にて、フレットをステンレスジャンボのものに打ち換えて頂きました。またナットもブラスにて再製作し、指板の擦り合わせなど行っていただき、完成です。

 

 

渋谷のライブハウス裏で撮影です。

 

 

ナットもステンレスが良かったので、ステンレス材を持ち込んだのですが金属加工の領分になるとのことで断られてしまいました。今度自分で作ります。Fenderロゴはもうほとんど消えてしまっていますね。

 

 

クルーソンタイプのロック式ペグは初めてです。

 

 

乾燥して色の薄かった指板もオイルですっかり色濃くなりました。自作蜜蝋ワックスも塗り込んでおります。

 

 

L字プラグをよく使うので、ストラトタイプの斜め挿しジャックプレートが苦手です。フラットなものに交換し、ジャックはグランドリオン2と同じくPure Tone Jackにしました。ノブは使い慣れたレスポールタイプのものにし、ブリッジに最も近いポット跡はビンテージマーシャルの廃部品(マイナスねじの頭部分)で穴埋めしました。これでも演奏中にまだスイッチやノブに手が当たってしまうので、まだまだ慣れが必要だと感じました。

 

 

トレモロブロックはエボニー材を挟んで固定しており、ブリッジが動いたり、アーミングできないようになっております。

 

 

塗装剥がれ部分にワトコオイルを塗ってみたところ、不自然な風合いになってしまい後悔しております。その他の部分では、塗装割れに染み込んだオイル塗料が良い味を出していて気に入っております。

 

 

ちなみに、年間何百ものFenderボディを扱う職人様に言わせれば、このボディはFender製かどうか怪しいところだそうです。どこがどうとは断定できないが、何か違う気がするそうで。ネックは恐らく本物だろうとのこと。

 

初めてのストラトキャスターでしたが、ネックの細さなどかなり気に入りました。思いのほか弾きやすく、音もジャキジャキと歯切れ良いのでお気に入りの1本です。

 

かかったコストは大体こんな感じです。

 

ギター本体・・・32000円

ペグ・・・7480円

5WAYスイッチ・・・3380円

ブリジ・・・3980円

サドル・・・3880円

ジャック・・・950円

ジャックプレート・・・1550円

ストリングスガイド・・・240円

フレット代・・・0円(ストック)

松下工房フレット交換・指板擦り合わせ・ナット作成・・・40700円

 

合計9.4万円くらい。