安定化電源パワーサプライの製作

2か月後に声優ユニット様のツアーでギター&バンマスを担当することになっているのですが、バックバンドとして様々な曲を演奏する際は、普段GEEKSではエフェクターを使用しない私もエフェクトボードを使います。今回のツアーで必要な音色や機材がなんとなく見えてきたので、久しぶりにエフェクトボードを組み直しておりました。ところが、使うべきペダルたちを並べ終えて仮組したところで、パワーサプライ(電源供給機)の電流量が足りないことに気が付きました。大元の電源を入れても、パワーサプライのLEDは途切れ途切れに明滅し、エフェクター群の電源ランプも付いたり消えたりしています。

 

どうやら大きな電流量を消費するデジタルエフェクターが2台あったので、手持ちのパワーサプライの供給限度である1A(1000mA)を超過していたようです。デジタルエフェクターを1つ外せば問題無く電源が行き渡りますので、1台分の電流が足りていないようです。アナログの歪みペダルなどは10mA程度の電流消費ですが、例えばワーミーなどのデジタルペダルは300mA近い電流を消費します。さらにプログラマブルスイッチャーも200mA程度の必要だったりしますので、1Aではやや余裕がありませんでした。

 

こんな場合は、供給元のアダプタを1.5Aの物に変更し、パワーサプライ内のレギュレーターを1.5Aの物に変えれば問題は解決します。もちろん2A、3Aと巨大なものに替えていっても良いですが、2A以上のお手頃な三端子レギュレータは近場の部品屋には置いていないので、今回は1.5Aとします。それでも数百mAは余裕があるので大丈夫でしょう。最初は改造で済ませようと思ったのですが、後述の理由により新たに作り直すこととしました。必要なものは、買わずに作りましょう。

 

こちらは長年改造しながら使用してきたCUSTOM AUDIO JAPANのパワーサプライ。新品では1万数千円だったようですが、廃盤となっている現在は中古市場で3000円程度でしょうか。購入した記憶が無いので、恐らく誰かに貰ったものと思われます。側面のLEDの視認性が悪いので天面にLEDを付けたり、専用アダプタしか使えなかった入力ジャックを変更して2.1mm径のものに替えたり、出力の1つをスルーアウト化して、交流入力アダプタの電源をそのまま真空管エフェクターのヒーター電源に供給できるように改造していました。

 

 

中身はこんな感じです。かなり雑な改造をしておりますが、パワーサプライなんてこんなもので良いのです。丁寧な配線と電源の安定はそこまで因果関係はありません。

 

 

まずは電源を供給するアダプタの調達です。秋葉原の秋月電子などでスイッチングアダプタでも買おうと思いましたが、やはりスイッチング式はノイズが気になることがあるので避けたいところ。色々自宅内を漁っていると、中国製の電動自転車(ペダルを漕がなくても進む道交法違反タイプ)の充電アダプタがありました。肝心の自転車の方は随分昔に粗大ゴミとして廃棄済みです。

 

 

スペックは直流17V出力、電流量は1.5A。幸運にもプラグも丁度2.1mm径ですし、中を開けてみるときちんとした造りのトランス式でした。これに決まりです。家電の電源アダプタなどは何かに使えるので取っておくことが多いのですが、これは久々に当たりですね。入力電源も交流100~240Vなら一律で直流17Vを出力しますので、万が一海外に持って行っても変圧器要らずです。

 

 

勿体ないのでCUSTOM AUDIO JAPANのパワーサプライを改造して使おうと思っていたのですが、どうにもこのDCジャックが気に入りません。エフェクター界での大定番であるマル信無線のMJ-10やその同等品ですが、差し込みの感触が浅くすぐにグラつき、しっかりとホールドされない感じがかなり好きではない。ですからいつもマル信無線のMJ-14やその同等品を使うようにしています。現場で電源トラブルが起こるのは恐ろしいですからね。きちんとプレイヤー目線で部品を選びたいものです。

 

MJ-10のデメリットとしては、穴あけの穴のサイズも大きくなるという部分もあります。今回全てのジャックをMJ-14に交換しようと思いましたが、既にケースに開いてしまっている穴が大きくて不可能です。よって新しいケースで作り直すことにしました。ガラクタ箱から見つけたのは奇しくも同じような白いケース。早速穴開けをしました。

 

 

白無地では豆腐みたいだったので、耐水ステッカー用紙にデザインを印刷しました。また仮組した際にレギュレータがかなり発熱したので、ヒートシンク(放熱器)を取り付ける事にしました。熱伝導をよくするために、ヒートシンク取り付け部分の塗装はサンドペーパーで剥がし、ステッカーも切り抜いています。本当はレギュレーターに直付けして外に出したいのですが、これでも無いよりはマシでしょう。9V出力ならば本当は12~15Vのアダプタを繋ぐべきなんですけれど、今回は手持ちのアダプタが17Vなので発熱はしょうがありません。会場も熱気に包まれるはずなので気にしないでおきましょう。サーマルシャットダウンが起きませんように。

 

 

出力が7つだとエフェクターの台数ギリギリだったので念のため9つ設けました。元々付いていた1000μFの電解コンデンサが勿体無かったので、新たに2200μFのコンデンサと並列合成して3200μFとして再利用しています。

 

 

回路図は下記のようになっています。いわゆる大定番の三端子レギュレーター安定化電源の構成ですね。ブリッジダイオードによる整流ですので、センターマイナスのDC電源だけではなく、極性が逆のセンタープラスアダプタも使えます。最近では少ないですが、もちろん交流出力のACアダプタでも使えます。三端子レギュレータはNJM7809FAで、1.5Aまで出力でき、値段も50円とお手頃です。

 

整流用のブリッジダイオードは定格600V・2Aの物を使っていますが、ここまで大きい電流を扱わないのならもっと小さい物でも良いでしょう。コンデンサ類の耐電圧はこれぐらいにしておくべきですが、容量はお好みです。電源環境や使用機材によってもノイズは変わってきますので、ここまで大容量コンデンサにしなくても大丈夫だったりもします。これくらいにしておけば安心といった1つの目安として考えておくと良いかもしれません。

 

 

原理は簡単。入力された電源を整流し、大容量コンデンサでリプルノイズを取り除きます。続いて三端子レギュレータで任意の電圧(ここでは9V)を作り出し、ここでもまた大きめのコンデンサによってリプルノイズを取り除き、出力されます。世間の簡易なギターエフェクター用パワーサプライはほとんど同じ仕組みです。

 

使ってみたところ、電源からのノイズは皆無でした。もちろん電流量も足りており、無事に全てのペダルが稼働しています。中国製の電動自転車用電源アダプタのおかげでツアーがより良いものになりそうですね。