木製テールピースの自作

弦楽器の弦を固定する道具の中にテールピースというものがあります。エレキギターのテールピースといえば、ブランコ型に代表されるようなトラピーズテールピース、ビグスビー型などがありますが、1番ポピュラーなものはこちらのGibson社タイプのストップテールピースと呼ばれる品でしょう。

 

 

色々な木の端材があったので、木製のテールピースを作ってみる事にしました。テールピースなんて複雑な構造ではない単なる金属の塊ですし、そもそもエレキギターは木でできているので、テールピースも木で作ったら何かが良い感じになるかも知れません。最悪、音に好影響が出なくても、そこそこ達成感はあるずです。多分。

 

樹齢100年、2年乾燥の松の端材があったので、まずはテールピースの大きさ位の角材に切り出し、スタッドに取り付ける用の穴を開け、ヤスリでひたすら削って大まかな形を作ります。

 

 

大雑把にテールピースの形が作れました。ここから細かく成型していきます。

 

 

と思ったらスタッドに引っ掛ける部分を切り出しているところで折れました。松の木は軽くて柔らかいので製作中も不安だったのですが、案の定簡単に折れてしまいました。割り箸くらい簡単に折れました。

 

 

一気にやる気が失せましたが、どうにか再奮起してホンジュラスマホガニーの端材を切り出し再挑戦。ホンマホは松よりも固いですが、軽くて削りやすいです。折れるのが怖いので先ほどよりも幅を広げてみました。

 

 

スタッドに引っ掛けるために、穴を拡張します。

 

 

中心部が分厚くなりすぎましたが、その辺りはこの後削りながら調整していきます。

 

 

ここで一度ギターに取り付けてみます。スタッドのサイズにピッタリです。

 

 

エレキ弦のボールエンドを固定する部分は、マホガニーでは強度的不安があったので、あらかじめ切り出しておいた煤竹(すすけた竹)の切れ端を接着します。1時間ほど万力で締めながらタイトボンドで接着したら、弦を通す穴を開けます。穴直径は3mm。

 

 

ひたすら削って形を整えます。設計図も作らずに雰囲気と思い付きで作っていったので勢い任せです。

 

 

こんな形に落ち着きました。

 

 

もう少しカッコ良いものを想像していたのですが、どうも木の温かみからか生易しい印象を受けます。

 

 

オイルフィニッシュで塗装してみました。WATCOのエボニーカラーで24時間乾燥です。まあ少しはハードボイルドな雰囲気になりました。

 

 

一応蜜蝋ワックスを塗布しさらに一晩置いて、乾いたウェスで磨いて仕上げました。

 

 

オイルフィニッシュ塗装は竹部分にも浸透するんですね。

 

 

早速ギターに取り付けてみるとこうなります。クールなエレキギターに突然現れる「木のぬくもり!」な感じに違和感を覚えなくもありませんが、最初からこういうものだと思えば段々気にならなくなってきました。

 

 

ギター弦のボールエンドはとてもカラフルなので(D’Addario社)、この部分をもっと見せたら良いのに、とずっと思っていました。

 

 

折れるのが怖くて結構幅広かつ分厚く作ってしまったので存在感があります。今回でいろいろ分かったので次はもうちょっと小さく作れそうです。製作時間はたぶん3時間以内。塗装で24時間、ワックスで12時間。

 

 

色が黒だったらもっとしっくり来たのでは、とも思いますが、木目を出さなければ木で製作する意味が半減してしまうのでしょうがありません。

 

 

全体でみるとこんな感じです。悪くないですね。ピックガードとの色味が合っていればもっと良かったのでしょう。

 

 

驚いたのが音の変化です。生音でジャカジャカ鳴らした時の音がまるで変りました。テールピースが凄い鳴ってるんです。このテールピースを何かで固定(ミュート)したときと、解放した時の響きが全然違います。そしてその音の振動は当然金属弦にも伝わっているので、こんなに変わるんですね。ただこれが良い効果なのかは分かりません。ものすごい鳴りますが、これをうるさいと捉える人もいるのかも知れません。数年放置していた乾いたホンジュラスマホガニー材なので非常に明るく響くのですが、もっと重くて硬い木で作れば、この鳴りはぐっと減るのでしょうね。しばらく使ってみてゆっくり評価を下したいと思います。

 

ただやっぱり達成感だけは凄いありますね。