斧のレストア

斧が欲しくて欲しくてたまらなくなりました。海外の動画サイトでは、鉄くずから斧を打ち、柄から革カバーまで自作する動画が星の数ほどあります。さすがに鍛冶屋のように鉄を打つところから行うのはハードルが高すぎるので、同じく多くの動画が見られる「レストア」を行うことにしました。「レストア」とは、老朽化などの理由により劣化もしくは故障した物を修復し、復活させることですね。

 

早速購入したのは2000円くらいで売っていた随分と古い斧。余り大きくないハンドタイプの物ですので大きく振りかぶれません。漫画「はじめの一歩」のように大きく振りかぶって薪割りをしたかったのですが、ネットオークションで安いものはみんなハンドタイプでした。ちなみに刃先の幅が狭いものが斧で、広いものが鉞(まさかり)だそうです。

 

 

刃のある金属部分から柄を外します。硬い木の楔(くさび)で頑丈に固定されているので、外すには破壊するしかありません。差し込まれた柄に何度も穴を開けて木を粉砕しました。

 

 

先に新しい柄を作ろうと思います。使う木は、眷属の庭に生えていた木を伐採した際に出た板で、伐採から10年ほど放置され十分に乾燥した木です。何の木かは正体不明で、とにかく重くて硬い木です。先日出版した本のSTEP3でもネック材として使用しております。

 

 

なんとなくの形状を書いてみました。西洋のアウトドア用の斧のように湾曲させています。そもそも湾曲している正確な理由は不明です。

 

 

電動ジグソーを駆使して大雑把に切り出せました。アルミや鋼材用の刃を使ったのに、木が硬すぎて騒音が酷かったです。随分と長く取れたので、これならば大きく振りかぶれそうです。

 

 

ノコヤスリを使って粗削り。大まかな形が作れました。

 

 

次に刃のある金属部分を研磨。赤錆が酷かったので60番のサンドペーパーでひたすら磨きました。電動サンダーやグラインダーがあればピカピカに削れたのですが、残念ながら所有しておりません。60番、240番、400番と磨いていきました。1時間ほど削ってこれくらいが限界です。

 

 

鎌用の砥石というものを購入して刃を研ぎました。砥石で刃物を研ぐのは初めてでしたが、色々調べてやってみます。

 

 

どうにか紙をスパスパ斬れるくらいには研げました。ところで和斧の多くに三本線や四本線の溝が掘られているのですが、この斧にも片面に三本線、反対側に四本線が掘られています。これは身(3)を避(4)けるという安全のゲン担ぎが由来だそうですよ。斧が当たれば平気で指が飛びますからね、とても危険です。

 

 

試しに包丁用の研ぎ器でササっと研いでみると、さらに切れるようになりました。砥石で頑張ったのは全くの無駄だったようです。

 

 

刃を取り付ける部分を加工していきます。差し込み穴のサイズに合わせて柄を切ります。

 

 

厚みを薄くしたら次は幅です。

 

 

ヤスリなどで削りながら何度も何度も微調整して形を作っていきます。使用中に刃がすっぽ抜けたら大惨事につながるので、きっちりキツいくらいのジャストサイズに木を削っていきます。

 

 

ようやく差し込み穴に入りました。金槌でガンガン叩いてようやく差し込めるキツさです。しかしこのままでは、刃よりも柄の幅の方が厚いので、薪割りの際に柄が木に当たってしまいます。赤い線より外側を削ることにしました。

 

 

様々な微調整を経てようやく成形完了です。

 

 

挿し込んでみるとかなりピッタリです。

 

 

しかし金槌で叩き過ぎて柄の反対側が割れてしまいました。斧づくりの動画では、誰もが柄を床に付けずに、空中に浮かせて金槌で叩いていた理由がわかりました。

 

 

完成した絵を60番のサンドペーパーで磨き、240番で仕上げます。滑らかに研磨したので割れた部分もわからなくなりました。

 

 

ワトコオイル(エボニー)でオイルフィニッシュ塗装します。

 

 

現状でもギチギチに固定されているのですが、斧の使用にはかなりの負荷がかかります。想像を超えた堅牢な固定が必要になるので、多くの西洋斧で取られている楔の打ち込み方で固定します。

 

 

中心線に沿ってノコギリで溝を切りました。やはり木が硬いのですごい音です。最近電動工具を使うたびに階下から「ドン!ドン!」という激しい音が聞こえてきます。本来の意味での壁ドンですね。

 

 

柄を差し込みます。

 

 

非常に硬いエボニーの端材があったので楔にします。

 

 

薄く切ってヤスリで形を整えました。

 

 

タイトボンドを塗って溝に打ち込みます。

 

 

金槌で楔を叩いていけば、想像よりも奥まで入っていきます。木が砕けるところまでキツく楔を打ったら、飛び出た部分をのこぎりで切断します。

 

 

究極にキツいと思いきや、まだまだキツく固定します。金属製の楔を金槌で叩きまくって打ち込んでいきます。

 

 

もう1本の楔を入れます。もう常軌を逸してキツキツです。これぐらい強固に固定しないと斧は本当に危険ですからね。

 

 

この断面も一応オイルフィニッシュしておきました。

 

 

柄には手作り蜜蝋ワックスを塗布し、外気から保護します。

 

 

刃物の錆止めには椿油を塗ります。この油はギターの指板などにも使用しています。石鹸づくり用の余りなのでローズマリーハーブが漬け込んでありますが、刃物には意味が無いでしょう。

 

 

斧のレストアが完了しました。

 

 

電動工具さえそろっていたら、全ての赤錆を落とし、鏡面仕上げにまで持っていきたかったです。

 

 

手によく馴染む、非常に振りかぶりやすそうな斧です。

 

 

刃が非常に鋭いため、このまま剥き出しだと危険です。300円くらいで買った革と400円くらいの革ひもでカバーを作ります。

 

 

造りがいい加減なので、革ひもに刃が当たっています。このままではいずれ紐が切れてしまうので、その辺にあった布を詰めておきました。

 

 

とてもやっつけ仕事な革のカバー。この部分だけ興味の無さが伺えます。高校生の頃は革細工にハマりアクセサリーなどを手作りしていたのですが、今では全く興味が持てません。

 

 

これで保管も安全ですね。

 

 

早く薪割りがしたいです。