レンタルワーキングスペースへ

先日完成しました自作ギター「グングニル」ですが、やはり素人である私が完全独学で作っただけあって、様々な部分で難があります。大部分は「自分専用のギターだから」という点で気にしなければすむ問題なのですが、やはり楽器としての「精度」に関する部分はもう少しクオリティを上げたいところ。しかしこれ以上は自分の設備や知識や経験ではどうにもならないような気がしましたので、プロにお願いするべきだろうかと悩んでいたところに、友人が面白い情報を提供してくださいました。

 

あの有名なギター工房コンバットギターズ様が、自分でギターを作ったり修理したり改造する個人向けに場所と機材を貸し出しているとのこと。レンタルワーキングスペースというものだそうです。

 

COMBAT GUITARレンタルワーキングスペースの詳細

 

早速お邪魔して散々お世話になってしまった挙句、その模様をネットに公開にしても良いかとお尋ねしたところ「むしろどんどん広めてよ」といった感じで快諾頂きましたので、以下に簡単にまとめてみました。

 

CONBAT GUITARS様の工房は板橋区にあります。JR埼京線の浮間舟渡駅が最寄り駅ですね。

 

 

外観はこんな感じです(Googleストリートビューから転載)。

 

 

着いてまず、自作ギターの相談をさせて頂きました。ロッドを回さない状態で指板が若干反り気味になっていること、フレットの擦り合わせが全然できていないことなど。

 

目標にたどり着くために、指板を斜めに削ってネックに疑似仕込み角を付ける、指板を剥がして指板を作り直す、この際新しく1本ギターを作る、などなど色々な方法を提案頂きましたが、最終的にできる限り大工事にならないような手法を選択し、下記のような作業を行うことに決めました。

 

 

・ネックのシェイプをもっと薄くしてロッドがもっと効くようにする。

・効きが良くなったロッドを締めまくって可能な限り逆反りを治す。

・その後、フレットの擦り合わせを行う。

・ブリッジの底面を削って低くして仕込み角の無さをカバーする。

 

 

まずはビル1階の木工スペースでギターの部品類を外します。手ぶらで来ましたが、工具なども使わせてもらえるのでありがたいです。もちろん自分の愛用工具を持ち込んでも良いそうです。横では職人様がギターのボディの形を整えていらっしゃいました。

 

 

社長様じきじきにアドバイスを頂いたり。

 

 

エコノミーサンダーという機械でネックの厚さを削ります。

 

 

初めて扱う機械でしたが、使い方を教えてくれるので安心。

 

 

ただ未知の機械なので怖いものは怖い。恐る恐る削ります。自宅では尋常じゃない削りかすに悩みながら木工を行っていましたが、ここには集塵機がありますし、散らかし放題です。ただ多少の木の粉を吸い込んだり、汚れは覚悟ですね。何もかも貸してくださいますが、マスクだけは持参した方が良いかもです。

 

 

粗削りしたネックをサンドペーパーで整えます。なんとサンドペーパーなどの消耗品も使い放題(多分)。これはありがたい。

 

 

わからないことはイチイチ質問してしまいましたが、惜しげもなく教えてくれます。

 

 

ちなみに1階には木材がたくさん並んでいました。なんとこれらの材料は購入可能だそうです。その他にもギターやベースにまつわるあらゆるパーツがその場で買えるとのこと。

 

 

次にビル3階に移動してフレット擦り合わせを行います。3階は組込みなどを行うスペースのようです。ここでは別の職人様がネック周りの作業をしていましたので、図々しくも声をかけてフレットの擦り合わせのやり方を教えてもらいました。

 

ストレートエッジをどうやって当てて、どこをどう見て判断するだとか、インターネットの検索では知ることのできなかった本物の職人さんのコツを色々と教えてもらいました。自己流で勝手なフレット擦り合わせをしなくてよかった。専門学校のギタークラフト科はこんな感じなのか、なんて思いながらここでも道具を借りて作業します。

 

 

平らなブロックにサンドペーパーを貼り付けて、教えて頂いた通りにフレットを擦り合わせます。途中何度も職人様を呼んでチェックしてもらい、どうにかフレットすり合わせ完了。こんなに図々しい素人にも嫌な顔一つせず親切にしてくださってちょっと感激ですね。その度に職人様の作業を中断させてしまいちょっと恐縮でしたが。

 

 

専用の特注工具などを使わせてもらえるのでとても順調に作業できます。買ったら結構高いですからね。

 

あとはもうフレットをサンドペーパーで磨き、番手を上げてピカピカにしていくだけになったので、「残りの作業は自分の家でやってみます」と言って帰り支度をしようとしていたのですが、社長さんが「ピカピカになるからバフがけまでやっていきなさい」と言ってくれまして、バフがけもさせてもらうことに。

 

2階は塗装等が行えるスペースになっていて、そこにバフがありました。ここでも機械の使い方や、その際のギターの持ち方まで教えて頂いてバフがけしました。このバフがけという工程はかなり感動しました。指板とフレットが驚くほどピカピカになりました。確かに楽器屋に並んでいるギターって、こんなにもピカピカだったなと気付かされます。

 

 

最後にグラインダーでブリッジを削らせて頂いて、弦高を下げてみました。しかしもっと下げるにはボディをザグるしかなさそうです。ネックに仕込み角が無いのはなかなかツラいですね。

 

こんな感じでコンバットギターズでのレンタルワークスペース体験は終了。自分の家には置けないような機械類や、とても買えないような機械、プロが使っている専用の特注工具などなど、それらが使い放題であることが嬉しいですね。

 

指板にフレット溝を切る特注機械もありまして、それを使えば数秒で全フレット溝が切れるそうです。指板のRを整形する機械もあり、自宅のベランダを粉まみれにしながら数時間頑張って削り、しかし結局真っすぐにはならなかったあの努力は何だったのかとも悲しくなりましたが、まあそれはそれで良い経験ということで。

 

あらゆるプロ用機械・工具が使える、職人様にアドバイスを頂ける、材料やパーツが購入できる、という利点のほかに、なんと有料で作業を代行して貰ったり、作りかけのギターを預かってくれたり、作業着も置いておけたりするそうですよ。本当に手ぶらで立ち寄れるシステムなんだそうな。

 

ちなみにこの電動ドライバーを使わせてもらったのですが、あまりに使い勝手がいいので帰宅後すぐにネットで探して購入しました。現在は生産終了品だそうですが、探せば中古市場にありました。

 

 

ツルツルに磨いたネック。未塗装でもこんなにもツルツルになるのか、と思うほど。

 

 

指板もフレットもピカピカです。フレットの両端の研磨が甘かった部分も指摘して頂き、修正できました。

 

 

テールピースの位置が高すぎる問題は、手持ちのアルミパイプをテンションバーのごとく使用することで無理やり解決しました。